伊羅保
古くから高麗茶碗の中に挙げられるが、中国製も、また南蛮物も混じっているといわれる。横に轆轤目の跡が際立ち、土の中の小石が火にはぜて、釉が荒れ手触りがいかにもいらいらしたものである。真清水蔵六の説は伊羅保は慶尚南道産であるとする。近年同地方で発掘した陶器にしばしば類似品を見るので、この説はほぼ信用できる。伊羅保は非常に種類が多く、古来茶人の称呼に千種、片身替り、釘彫、黄または黒伊羅保などの区分がある。後年釜山窯や対馬窯でその作品を模倣したものもこの中に混同したので時代に新旧があり、産地もまた諸方に分在している。その作品は粘土の中に雅致があり、最も茶人の間で愛翫された。名称については粗作で見た目にも手触りにもいらいらまたはいぼいぼする感覚があるので、通俗に伊羅保と呼び慣したものではないかといわれている。なおこの茶碗については茶人間に不思議な習慣があって、その素質の粗雑なのにも関わらず微細な疵をも嫌い、他の井戸茶碗などでは堅樋または疵繕いなど意に介さないのに対して、疵では最も厳重に嫌忌し、疵の有無が価格に関係することが他の茶碗と比べ物にならないのは、素質が粗雑であるためことさらその保存に万全を期する意味ではないだろうか。
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2010年02月15日 コメント&トラックバック(0) | トラックバックURL |
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